シャカシャカ手筋集 〜L字禁ってなぁに?〜

この記事は「ペンシルパズル Advent Calendar 2024」15日目の記事です。

 

こんばんは。きなこ屋です。

今晩もシャカシャカを採掘してまいります。

本記事はシャカシャカ手筋集です。今後も更新を重ねていく予定です。

理詰めと手筋と仮置きと

Twitter(旧Twitter)で稀に見かける議題として、「理詰め問と仮置き問の境界は何処か」というものがあります。

特定の手筋を知っているか否か、その手筋を適用できるか否かは解答者に依存します。私見ですが、「どんな問題も推論の組み合わせでできている」という仮説に則るならば、解答者が知っている手筋だけで推論できる問題を理詰め問題、そうでないものを仮置き問題と分けることができるでしょう。(この観点では、仮にたった1手1段階でも仮置き(先読み)が必要になってしまえば理詰め問題とは見做せないという点に注意が必要です。)

解答者の手筋体系は経験に依存するでしょう。従って体感難易度も解答者個々に依存することになります。故に目標は次の点にまとまります。

  • 問題を構成しうる手筋を網羅し分類すること
  • 問題が特定の手筋集合で解けるか判定すること

きなこ屋は今年しばらくの間、この二者に取り組んできました。本記事はその途中経過と捉えてくださいませ。

手筋の分類 〜L字禁ってなぁに?〜

手筋への造詣が十人十色であるように、何処から何処までを一つの手筋と捉えるか、も解答者によって差異が現れます。

例として、次の図をご覧ください。

[図1] 似通ったL字禁

左右どちらも、斜めの長方形を右下に延長しないと破綻してしまう形、いわゆるL字禁です。

しかし、左右の形状を一つの手筋と捉えるのは疑問です。なぜなら、仮に斜め長方形を延長しなかった場合、図2のようにL字型の直立領域が出来てしまうのですが、その位置が左右で異なるのです。

[図2] 図1の破綻事由

図3は図2の左右それぞれのL字禁の出現パターンを6個ずつ集めたものです。個人的には、右の方が左より見えづらく難しい推論であると感じます。故にこれらは単一の手筋であるとは言えないと考えられます。

[図3] L字禁の出現パターン

そしてより根本的な問題として、「L字禁」という名前はどの範囲の手筋を指すのか定かではありません。よりシンプルに、L字型の直立領域が生じる状態を全て引っ括めてL字禁と呼称するのが一般的でしょう。

[図4] L字禁とは?

ですが、シャカシャカの手筋の多くはこのL字禁を前提に作られています(ふた、奇数列etc.)。手筋分類の動機を考えれば、L字禁および図1のような派生手筋たちは区別するべきでしょう。

ということで、以下で手筋を分類・列挙するにあたっては、あくまできなこ屋の主観によって手筋を同定していくものとします。

この記事をご覧の諸氏には、是非ともご自身の手筋の類別についてご意見を頂戴したく存じます。「こんな手筋ありますよ」「この手筋はさらに細分できるんとちゃうか」「この手筋はもっと易しい/難しいはずだ」「これは手筋と認めないZOY」など、各位のご経験に基づくご指摘を心待ちにしております。

 

※手筋名は全て仮称です。より良い名称についてもご意見お寄せ下さいませ。

らくらく級【★1】

A-01 [確定数字(大)、確定数字(小)]

黒マス数字が、黒マスの周囲に入る三角形の数の最大値に等しい場合、それら全てに三角形が入ります。

黒マス数字が、黒マスの周囲に入る三角形の数の最小値に等しい場合、それら全ては白マスになります。

誰もが一番最初に獲得する手筋でしょう。本記事では45°禁を手筋に含めていないので...

A-02 [反射]

三角形の隣に「壁」がある場合、壁で反射するように三角形を配置します。

これ無しに解ける問題は存在し得ないでしょう。

※「壁」とは、黒マス/白マスの辺、三角形の底辺、盤面の周囲、のいずれかを指します。

※「白マス」とは、完成盤面で直立長方形に属する白マスを指します。斜め長方形の内部に含まれるマスは除外します。(この記事で紹介する手筋によって生じる白マスは、全て直立長方形に含まれます)

A-03 [袖当て、壁当て、正面当て、角当て]

三角形の向かいに障害物がある場合、それに当てるように三角形を配置します。障害物の位置によってやや置き方が異なります。

ここでは障害物の位置によって細かく4分割していますが、発生する三角形の位置によって「袖&壁」と「正面&角」で分ける説も、逆に反射(A-02)とまとめて5分割とする説もありそうです。

※参考:当て系の比較

A-04 [直立長方形延長]

白マスがL字型に並んでいるならば、それらは単一の直立長方形に属します。

これも広義にはL字禁なのでしょうか。

A-05 [L字禁]

白マス同士が斜めに接していて、それらが同一の直立長方形に含まれないならば、三角形で遮断する必要があります。

多くの手筋の根源。

A-06 [白確]

2つの壁に挟まれたマスは白マスになります。

再掲しますが、白マスの辺も壁に含まれますので、1マスおきの白マスは自動的に繋がることになります。

A-07 [ふた]

直立長方形の単一の辺が一部のみ決まっているならば、該当の辺を塞ぐように三角形を並べます。

45°禁により、ふたを構成する三角形は向きを交互にして並ぶことになります。

A-08 [ハイタッチ]

三角形2つが山型に背を共有しているならば、互いに反射します。

楽々級の中では最も手筋らしい手筋ではないでしょうか。

A-09 [対辺確定]

斜め長方形の向かいあう辺は、同様に延長されます。

手筋と言って良いのか不明な程度に自然な推論です。がしかし、図の右上のように斜め長方形が完成していない状態でも適用することができるのはやや非自明だと考えています。空中ブランコ(C-01)と組み合わせると楽しいことになります。

おてごろ級【★2】

B-01 [P字禁]

そのままではL字禁基礎(A-04)に引っかかる箇所には、三角形が発生します。

使用頻度は相当高いです。具体的に該当する形状を説明するには、この余白は窮屈です。

B-02 [桂馬飛び]

確定数字(A-01)などで三角形を置くべき場所について、その斜め隣に障害物がある場合、三角形の向きが決まります。

慣れると当たり前のように作問時に投入してしまいますが、かなり非自明な部類に入るでしょう。

B-03 [L字禁2]

斜め長方形が角の斜め隣にあるとき、それを延長しなければなりません。

先に挙げた図1もご参照ください。

B-04 [L字禁3]

斜め長方形が角・白マスの斜め隣にあるとき、それを延長しなければなりません。

先に挙げた図1もご参照ください。なお、出現頻度はこちらがずっと低いです。

B-05 [辺傍の2]

P字禁(B-01)の原理で、三角形を置かなければならない場所が存在します。特に、辺から2列目に2が単独で置かれている場合には白マスが1つ決まります。

辺から2列目の2という形で出現することが最も多いですが、その本質は「白マスにならないマスが決まる」というものです。

B-06 [遠当て]

幅が2√2以上の直立長方形における当て(A-03)です。

巨大な斜め長方形で、とりあえず対辺を引いてみる経験は誰にもおありでしょう。

B-07 [幅の不一致]

幅の異なる斜め長方形同士は繋がりません。

手筋としてはずっと明らかな部類ですが、楽々級の問題にはまず現れません。

B-08 [軒下の白]

図のような壁で囲まれた位置には三角形を入れることができません。

「これが確定したところで...」となりがちですが、P字禁(B-01)やL字禁3(B-04)に繋げるなど、輝く場面は確かにあります。

たいへん級 【★3】

C-01 [空中ブランコ]

図の位置関係にある三角形たちは、同一の斜め長方形の辺をなします。

これを適用すると必ず幅2√2以上の長方形ができます。

C-02 [筋違い禁]

斜め長方形が筋違いになる位置に三角形を置くことはできません。

確定数字(A-01)や辺傍の2(B-05)とタッグを組んで現れます。

C-03 [白確先読み]

直立長方形をそれ以上延ばすと白確(A-06)などで破綻する場合には、ふた(A-07)をする必要があります。

これも適用できる形状を列挙すると大変なことになります。

C-04 [L字禁4]

L字禁2,3(B-03,04)を、より少ない個数の三角形から適用することができます。

三角形が主体になる手筋は、実際の盤面で発見するのが難しいことが特徴です。

C-05 [LP先読み]

図のように角の近くに2択の数字があるとき、一方がL字禁(B-01)で破綻することが予測できれば、他方に確定させることができます。

L字禁とP字禁(B-01)の合いの子です。

C-06 [奇数列]

ふた(A-07)は必ず幅が偶数になります。これを逆手に取って、幅が奇数の直立長方形は、幅が奇数である限り何処までも伸びていきます。

これが出現する問題は大抵この手筋を主体にしています。

C-07 [遮断]

幅の異なる直立長方形同士は繋がりません。直立長方形同士の間隔が1マスだと白確(A-06)で繋がってしまうので、間隔が2マスならば両方にふた(A-07)をする必要があります。

C-08 [確定数字+]

確定数字(A-01)のやや複雑なバージョンです。マインスイーパの原理です。

数字が斜めに連なっていて最大値や最小値に近い場合、値が決まることがあります。

数字が2マスおきに配置されている場合、壁当て(A-03)と白確(A-06)によって、それらの間に三角形が入るか否かが連動します。

アゼン級【★4】

D-01 [1の手筋]

数字1の周囲の特定の位置に障害物がある場合、白マスが決まります。

初見ではまず困惑すること請け合いです。

※[1の手筋]の詳しい解説はこちら↓

kinako-ya.hatenablog.com

D-02 [吹き込み]

辺や壁から3列目に数字マスがある場合、三角形の配置が連動することがあります。

LP先読み(C-05)の逆により、三角形が入るべきマスが決まります。

D-03 [呼鳥門]

3マスおきの位置に、向かい合わせに三角形が入ることが確定している場合、それらの配置は2通りのいずれかになり、壁が生じます。

名称募集中。

※[呼鳥門]の詳しい解説はこちら↓

kinako-ya.hatenablog.com

D-04 [風船ガム]

幅2以上の斜め長方形が壁に向かっていてかつ特定の条件を満たす場合、斜め長方形を延長する必要があります。

D-05 [大きい数字]

数字マス付近の特定の位置に三角形がある場合、数字マスの周囲に三角形を置けなくなる状態を避けなければなりません。

ペンシルパズルガチャ産の問題では頻出です。

D-06 [吸い付く壁]

図のように直立長方形の近くに三角形がある場合、直立長方形が1列だけ延長されます。


ハバネロ級【★5】

※執筆時点では工事中です。恐らく汎用性が低いものが多いため、別記事にて改めて纏めることになりそうです。

 

仕舞いに

改めて、ご覧の皆様にお願い申し上げます。体感難易度は何処までも解答者個々によるものです。手筋の分類をより広く扱えるものへと高めるため、ご意見をお待ちしております。

本記事は随時更新いたします。