パズル祭2025に出展しました

こんばんは。きなこ屋です。

先日10/18(土)、東京は秋葉原にてパズル界の大イベントが開かれました。

あらゆるパズル愛好の士が一堂に会する即売会、パズル祭です。

matsuri.logicpuzzle.app

これは、何も知らないシャカシャカ狂が1人で徒手空拳でブース出展に臨んだ記録です。

自分含め、次回出展を考えている方々の為の備忘録になりますよう。

準備期間

8/3 始まり

都内某所にて開かれた豪華ラウンド制パズル大会、Puzzle Assort Contest。

元々きなこ屋はパズル界に在って何故かシャカシャカ以外解けない自信がございます。にも関わらずかつてない規模・難易度の大会に生身の拳一つで挑み、当然楽しく粉砕されたきなこ屋はその晩、懇親会の席に杯を呷っておりました。

偉大なる作問者の面々に圧倒されつつ、「せめてシャカシャカラウンドがあれば...」「何なら作問にも興味がある」と漏らしていたところ。

「そんな貴方にお誂え向きのイベントが!」

と、パズル界の地面師殿の貴重なお誘いを頂戴しました。

聞けば某有明会の如く、パズルを愛する者が集っては豪奢の限りを尽くす一世一代のイベントであるとのこと。即ちこれに作問者として出展し、在らん限りのシャカシャカを投げ売るべし、と!

なんたる好機、そして出展期限は翌週8/9に迫っています。しかしながら文化祭等とは異なり、個人での出展になることは必至。それに何をどう頒布するのか、果たして出展して良いものか、期限直前まで躊躇に躊躇を重ねました。

決め手になったのは、申込期限前日のこちらの告知。

乗り掛かった船ならば同じ舵を握るもの。締切6時間前に小匙ばかりの勇気をもって申込フォームを恐る恐る送信しました。

なお、この時点では本当に何も決まっておりません。誰が・何人で・何を・売る/見せるのか神のみぞ知るばかりです。唯一必要になる団体名「きなこ屋本舗」は20秒で浮かんだ仮称でした。

後に、雲を掴むまま滑り込みで応募したのが1人ではないと知り胸を撫で下ろします。

 

8/19 概形を作る

出展を決めた挑戦者たちは、1月以内に運営に必要な諸々を提出していきます。ここで予め決めておく事項は、

  • イベント型orブース型(頒布/企画) → ブース(頒布)
  • 企画概要説明文 → 「食べきれないほどのシャカシャカを召し上がれ!」
  • 運営人数 → 1名
  • 無料/有料 → 検討中
  • 机・電源の使用数 → 机1/2、タップ無し

等です。

きなこ屋は長机を拠点に物を売るブース型・頒布で申請しました(が、実際は企画要素も含んでいたため別途運営に相談しておくのが吉でした)。もし作問大会やコンサートのようなイベント型出展を行う場合は収容人数等も細かく決めておく必要がありましたが、単にブースを借りるのみであれば「何を配るか」は未定のまま潜り抜けました。

とはいえ説明文を考えるに至って、流石にきなこ屋も出展内容のイメージを確立しつつありました。

① シャカシャカ問題集or手筋まとめ本を売る

② 来場者と速解き勝負

主にこの2本です。シャカシャカオンリーの問題集や解説は稀少性から需要があると見ました。また、しばしばペンシルパズルガチャRTAを走る身として、自分が戦う目的で速解き勝負を検討していました。きなこ屋に勝てれば①の本を贈呈or割引するのも面白そうです。(この案は倫理的側面から没になりました。)

 

などとアイデアを抱えたまま、日々が過ぎること光陰矢の如し。

 

9/26 原稿作り

おっと。瞬きする間に、開催まであと3週間まで迫っておりました。脳内に抱えたアイデアを実体化する時間です。

取り敢えず自分の経験を形に残すため、本は手筋まとめに決定しました。また、出展に③巨大シャカシャカの展示を加えることにしました。これは過去作をまとめて展示し、スペースに華やかさを醸成する目的です。

 

さて②速解き大会はともかく、①本を売るにはかなりの準備が必要です。最大の問題となる印刷方法に、想像以上に頭を捻ることとなりました。

まず手筋本に入れたい手筋が15種程度ありますので、少なく見て24ページは欲しいものです。加えて、運営による来場者数の推定値は150名(内出展者50名)。オンライン販売の分も見積もって50部程度用意することを考えると、家のプリンターでは荷が重いもの。必定、印刷所を利用することになります。

かつて母校の文化祭でも利用した大手印刷所を利用することにしました。但し、納期・発送を含めて発注から1週間~10日程度は見たいところ。予想以上に期限が迫っています。

原稿にトンボが必要と耳にして急遽無料体験版Photoshopを導入して苦しめられるなど試行錯誤しましたが、幸いにもWordで作成したファイルをpdf出力してそのまま入稿可能だと判明。Wordで原稿を作成することになりました。

 

ということで早速原稿を書い...

 

 

9/28 大阪万博

大屋根の下から



...一人旅を堪能した後は、缶詰作業です。

Windows版とMac版のWordの仕様差、標準外フォントの出力エラー等に匙を投げかけました。

そうして無事A5サイズ32ページの原稿を仕上げ、開催11日前の10/7に入稿完了と相成りました。

 

10/11 開催直前

開催1週間前。若干遅れ馳せながら、Twitter(旧X)で出展告知を行います。

告知内容は本家東京ビッグサイトのそれを幾つか参考にしました。ブース型出展は基本的に本家に倣えば間違いないようです。

他の出展者の皆様の準備風景を眺めていると、発注した冊子50部が早くも手元に届きました。想像以上に光沢のある紙質もあり、存外立派な出来を自負するに至りました。

そして開催は目前。流石にブースの机に冊子だけ積んでふんぞりかえる訳にもいかないので、有明大即売会レポを参考に、設営用の品々を取り揃えます。

  • テーブルクロス
  • 見本誌立て用イーゼル
  • 展示用の金属網+スタンド
  • 展示用のA4額縁

これらは100円ショップで揃えることができました。

並行して、巨大シャカシャカを急遽1問増やすことにしました。折角パズル祭の公式ロゴがあるので、巨大シャカシャカの絵にして目を惹こうという算段です。何故か128*128のフルサイズにしたこともあり、これに存外時間が掛かりました。結局完成は前日の昼までもつれ込みます。過去作をまとめるだけとは何だったのか。

[パズル祭]

奇しくもトラップは重なるもので、速解き用の問題を刷っている最中に家のプリンターがインク切れを起こしました。幸い100戦分の問題は用意できましたが、色々と印刷したい前日には致命的な障害。仕方なく一部のビラはコンビニプリントを利用することになり、想定外の出費を食らってしまいました。

諸々の不安はあれど、用意した頒布物のクオリティには悔い無し。当日朝2時に眠りにつきます。

当日

設営

10時の開場に先立ち、大荷物を携えて8時に設営開始。

先ずは全体設営の人手に加わります。寝呆け眼を擦って、机や椅子、パーテーションを移動させます。学校教室3つ分程度の広いスペースに机が並び、立食パーティーと見紛う雰囲気に。運営スタッフ方の迅速な指示により30分程で会場が整いました。

続いては個人ブースの設営です。国際展示場のそれを思い浮かべながら、長机の半分にそれらしく物品を飾って占拠していきます。無骨な机もテーブルクロス1枚でお洒落度が倍増です。

きなこ屋のスペースはちょうど背後に荷物置き棚がありました。刷ってきたA3ポスターを貼り出すのに好都合と思い問い合わせたところ、めでたく運営様から許可を頂きました。設営時に運営スタッフ方々の親身なご対応が沁みます。

新刊を積み、品書きを吊れば、9時前には準備完了です。

設営完了

色々と小物をかき集めてきたにも関わらず、肝心の値札を忘れてきたことに気づき、急遽モールと折り紙で細工を試みました(写真左下)。どういうわけかブース本体よりもこちらの制作に時間を注ぎ、気づけば開場15分前。

運営に参加費支払とスタッフ登録を済ませ、いよいよスタートです。

 

新刊の売れ行き

10時開場とともに来場者が雪崩れ込みます。

本ブースは一番端ではあるものの、中央のフリースペースを囲むようにブースが立ち並ぶため、順路に従って人が流れてきます。そして列が目前に至るや否や

「手筋ハンドブック下さい」

「なにぃ」

早速1部目の手筋本をお買い上げいただきました。500円玉を受け取り、新刊を手渡した瞬間の感情はいかなる珍味にも代え難いものがあります。

それも冷めやらぬまま、次の方に2部目を販売。人が来ては新刊を発見即買の連鎖が続きました。

 

...あれ、こんなに売れるものでしょうか?

準備中に印刷部数を考えるに際しビッグサイトパーティーの見聞録を漁っていると、初参加では20部売れれば良い方との噂を耳にしました。そのため正直に申し上げれば、50部のうち半分も捌ければ大戦果と考えておりました。

それどころではありません。10時台で既に10部以上を手渡すに至りました。売り切れペースです。内心はもはや狂喜乱舞しております。

まさかそんなにシャカシャカ愛好の士がいらっしゃるとは! シャカシャカの未来は明るい!(と喜びを露わにしながら、見開いた目で新刊を手渡していました)

結局この喜ばしいペースは終日続くことになります。

 

ブース管理

無謀にも1人でブースを管理するからには、あまり長く席を外すわけにもいきません。折角垂涎の傑作が所狭しと陳列されているのに、買いに行くことさえできないのでしょうか...

 

そんなことはなかった。

 

有明大祭ではしばしば目にする、お隣さんとの交流。今回きなこ屋の隣で長机を分け合ったのは、世にも名高いあのパズル部でした。

なんとも幸運なことに、朝からブースを運営されていたのは、かのノースリーの発明家様。以前きなこ屋が文化祭に闖入した際にノースリー講義を伺ったこともあり、恭しく挨拶をさせていただきました。

互いに1人体制でブースを見張る中、賑やかなステージイベントが始まろうとします。そこで、きなこ屋が両方のブースを見守ることを提案。その間にイベントを観覧いただくことができます。

そしてイベント終了後には逆にこちらのブース管理をお願いし、きなこ屋が他のブースを見て回ることができました。

本来ならば金銭管理が怖いところですが、今回は彼方の頒布物が無料配布であったこと、そして快く協力を受け入れて下さったことにより、無事共同管理ができました。

ちょうど文化祭が控えており、多忙の中にも関わらず出展して下さったとのことです。要チェック!

 

買い物

鉄人にブースを押し付けて、賑やかな展示場を見て回ります。

とりわけ目を引いたのが謎解き。実は近頃パズルから目を引いて謎解きチャンネルを観たり夏の間に脱出ゲームに出掛けたこともあり、謎解きへの熱が高まっておりました。

お勧めに従い、パズル要素強めの謎解きを1作購入。存外難易度が高く、執筆時点でもまだまだ楽しんでおります。

そして何より、2つ隣のブースが大人気でした。錚々たる強者が組み上げた解説付き大ボリューム問題集『ぱずがいど』が、なんとお手頃価格¥500。一際輝きを放つ傑作選に、あらゆる人が足を止めていたのが印象的でした。

もちろんきなこ屋も購入。読んで分かるその精巧さに、今まさに唸っております。なんとBooth販売もあるとのことで、是非味わいましょう。

 

ポスター

開催1週間前に突如加わった、A3サイズ巨大絵シャカシャカの頒布。新刊とは違い、無料配布の形式をとっています。

ところがこのポスター、問題の高い難易度と常軌を逸したマスの細かさ故に、問題として解くには相当な手腕と視力を要します。ましてシャカシャカを普段解かない層にとっては完全なる観賞用の白黒ドット絵になる可能性があります。

それゆえ、たとえ無料でも手に取ってくださる方は少数であろうと推定し、用意したのは7種類×5枚だけでした。

が、35枚のポスターは早くも午前中にあっけなく売り切れてしまいます。

何故か。

 

「7種類全部ください!」

「ホアッ」

「2枚ずつ!」

「ワ...ワァ...」

 

その名も轟く精鋭集団による有難くも予想外の一撃。なお、1枚解くには作問者でさえもWeb上で1~2時間を要します。紙面で鉛筆で解くにはおおよそ倍程度掛かります。手をつければ最後、間違いなく1日が溶けてしまいます。

更に恐怖すべきことには、この後「全部ください!」を別の方から頂戴しました。そうして12時前には、用意したポスターは全種類底をつきました。

これはいけない。急遽ブースを放り出してお隣に任せて、会場から5分ほどのコンビニで増刷を行いました。元データを持っていなかったため少々値は張りますが、無事に20枚増刷完了。

そうして増やしたポスターは、改めて14時頃に完売しました。無料を謳いながら意外にもポスターだけをお持ちいただく方は少なく、ほとんどは新刊のおまけにお渡ししました。

 

...当日ポスターを召し上がった各位。ご利用はどうか、どうか計画的に。

 

速解き勝負

さぁメインイベント。と言いつつ、きなこ屋も相当自信を持って挑んでいるためか申込は少なく、時々強者諸氏が真剣を構えて斬り込んでくるイベントとなりました。

それも初戦から早速『ぱずがいど』著者に名を連ねる名手との一戦。ガチャで用意した問題を紙に印刷し、3問1セットを鉛筆で解く形式をとりました。

が、ルールを整えていなかったのが痛恨。シャカシャカの三角形を紙に書こうとすると、①三角形を黒く塗り潰す、②三角形の輪郭だけを描く、③斜辺だけを描く、の3通りの解き方があります。もちろん①<②<③の順に早く解けるのですが、③と②で対決してしまったために公平さを欠いてしまいました。以降、きなこ屋が対戦相手の解き方に合わせる方式をとることに決定。今後速解きの際は注意するといたしましょう。

その後も、解答プロフェッショナルの偉人に次々に襲来を受け、痛くも1敗を喫しました。餅は餅屋、やはり紙面で解くスキルが未熟でございました。

そして15時台になり冊子が売り切れた頃、対戦用に用意した100問の問題が余ろうかという時、日々Twitter(旧X)で毎日投稿を解いて下さる方の挑戦を受けました。これが中々に熱が入り、イベント終了間際まで計48問の勝負を重ねました。手筋の扱いに長けている方との手合い故に最も白熱し、少しでも気を抜けば2回程僅差に追い込まれました。お陰様で売り切れ後も休まる暇がありませんでした。またやりましょう。

 

幕引き

全てが売り切れたブースで燃え上がるバトルに勤しむまま、気付けば17時の閉場を迎えます。

最後の来場者を見送った後は片付けの時間。全体設営の撤収が力仕事ですが、やはり機敏な誘導の下で30分ほどで原状を復帰します。

紙束が無くなって大幅に軽くなった手荷物を戦利品と共にまとめ、大団円の下にパズル祭は終了しました。

収支面では、参加費・印刷費等含めて全体で1栄一程度の黒字になりました。

 

 

 

その後

今回の出展物についてお知らせです。

①「シャカシャカ手筋ハンドブック」は完売のため、当日頒布した50部限定になりました。何ならうっかりラスト1部まで重鎮にお渡ししたため、きなこ屋の手元に残部がございません。

現状は増刷等の予定はございませんが、もし1件でも要望がございましたら、電子版をBoothで一般販売いたします。ご興味のある方はTwitter(旧X)DM等でご相談くださいませ。

②「巨大絵シャカシャカ」は、オンラインで公開しております。時間にご注意の上お楽しみください。

③「きなこ屋と速解き勝負」は...対面にて随時受付中です。街中できなこ屋を発見した際には、モンスターボールを構えてお気軽にご挑戦いただけると幸いです。

 

 

今回のようなシャカシャカ専門の出展はまず他所では見ない・出来ないでしょう。その点パズル祭は自分の専門を突き詰められる、月並みですが学会の如き雰囲気がありました。

パズルイベントに参加して毎回驚かされることは、普段紙面やオンラインで名前を仰ぐのみの偉人諸氏が実在するということです。その上、名作の制作背景などお話できるともなれば天にも昇る心地に。逆も然り、「毎日シャカシャカ解いてます!」等と言われた日には再度天にも昇る心地に。

パズル祭は間違いなく、名作の海に浸かりながら実在を噛み締める、最強の交流会でした! 出展者として参加できたことは人生に残る実績です。

改めまして、今回お声お掛け頂いたパズル祭運営様、イベントにてご一緒した出展者・来場者の皆様、誠にありがとうございました。

 

今回のパズル祭が「第1回パズル祭」になりますように。

シャカシャカと唯一解理論

こんばんは。きなこ屋です。

今回はシャカシャカにおける唯一解理論について検討してまいります。

 

先に述べておくと、この記事を作ることには消極的でした。きなこ屋は唯一解性を確認することもパズルを解くことに含まれると考えているためです。唯一解理論を使ってシャカシャカを解くことはこのポリシーに反するばかりでなく、唯一解理論を知っているだけでも確認の楽しみを妨げることを懸念しておりました。

しかし、特に手筋物のシャカシャカを作問するに当たっては、余分な解き筋を削減して想定ルートに誘導することが欠かせません。唯一解理論の解析も従って必要とされることでしょう。

この記事は唯一解理論を用いることを推奨するものではありません。目的は唯一解理論の強力さと解答・作問に与える影響を認識することにあります。

唯一解理論(ユニークネス)とは

ある盤面が唯一解(ユニーク)である、という情報を利用して盤面の一部または全体を決めることが出来る手筋のこと。

(ペンシルパズル百科より)

解が1つであるという暗黙のルールを要する推論が唯一解理論となります。

ここではいくつかの唯一解理論を観察してみましょう。これらはいずれも「解を持つならば複数解」な状態にはならない、という考え方を用います。

 

※この記事は裏・手筋集とも言えます。もし以下に挙げる他に唯一解理論を発見・研究されている方がいらっしゃいましたら、ご意見お寄せください。

その1:2×2の空間

[例題1] を[図1]Aの状態まで解き進めます。

Aの状態は中央に赤で示した2×2の不完全な空間があります。

もし隣の青マスにBのように三角形を配置したとすると、中央の空間は完全に孤立しますので、空間に三角形を入れる場合(D)、入れない場合(E)を区別することができなくなります。Dの状態が解を持つならEも解を持ちますし、逆も同様です。従ってBは解を持つならば複数解です。

解く過程で唯一解(A)から複数解(B)になることはあり得ませんから、Bは解なしだと判明します。これによりAからCへ推論することができます。

隔絶された空間の内部が複数解になりそうな場合は、周囲と接している部分が白マスになる、と一般化できます。Aでの正攻法は1の手筋ですが、Cの状態になれば右の1がすぐに確定し楽に解くことができるでしょう。

[図1]

その2:隅の空間

[例題2]を[図2]Aの状態まで解き進めましょう。

Aの状態は右下に確定しなさそうな空間が存在します。そこでAの青で示す部分に注目しましょう。

Aの部分の三角形の置き方はB,C,Dの3パターンが存在します。しかしながらB,Cでは右下の茶色部分に三角形を入れる/入れない置き方が区別できません。B,Cは解を持つならば複数解となります。

やはり解く過程で唯一解(A)から複数解(B)になることはあり得ませんから、B,Cは解なしです。よってAからDへ推論することができます。

Dの形に到達すれば黒マス2が確定し、残りの空間を容易に処理することができます。正攻法では2の周囲をしらみつぶしに調べるか、技巧的ですが左下の2の真右を決める必要があるでしょう。

[図2]

その3:隅の空間Ⅱ

その2の類型として、[例題3]を題材に紹介します。

Aの状態は、右下隅から3行3列の位置に1がぽつんと浮いています。

まず1の青で示した真右に注目すると、B,C,Dの3通りの置き方が存在します。このうちBは直ちに破綻します。Cの場合は右下の茶色部分に三角形を入れる/入れない場合が区別できませんので、Cが解を持つならば複数解となり、Cも棄却されます。よってAの真右はDのように白マスとなります。

1の真下についても全く同じことが言えますから、AからEまで一気に飛ばすことができます。

正攻法では1の手筋が必要ですが、Eの状態からは右辺の直立長方形にふたをすることで展望が開けます。

[図3]

その4:強制的な幅の不一致

[例題4]を見てみましょう。

[図4]Aでは、図に示す赤色の2つの長方形が繋がるか否かが不明です。

ここでBのように進めると、2つの長方形の幅が等しくなりますので、2つの長方形が繋がる(D)か繋がらない(E)かが真に判別できなくなります。すなわちBは解を持つならば複数解ですから、唯一解性により棄却されます。

従ってAからはCのように上側の長方形の幅を広げ、2つの長方形が繋がらないことを確定させる必要があります。本問のように正攻法(風船ガム)が分からない場合には役立つでしょう。

この推論は「長方形を広げると破綻しやすくなる」シャカシャカの性質に真っ向から反しており、興味深いです。

[図4]

似た例を1つ挙げておきます。[例題5]

Bは解を持つならば複数解ですので、AからCへ進めることができます。正攻法(LP1)より余程簡潔です。

[図5]

その5:呼鳥門

[例題6]を[図6]Aまで進めます。

ご存知の通り、呼鳥門はAの左上の橙部分のような形が2択になる手筋です。呼鳥門は形を2通りに絞ることによって「壁」が作れる便利な手筋ですが、どこかで2通りを1通りに絞り直さなければならないという弱点もあります。

もしAからBへ進行して呼鳥門だけが入った空間を作ると、DとEの2択が確定できなくなってしまいます。故にBは解を持つならば複数解になり、棄却されます。

逆にAからCへ進行すれば、FとGの2択においてFを破綻させることができ、Gまで確定します。

正攻法では先に右下をL字禁で埋めることになりますが、この性質を使えば最後まで残されがちな呼鳥門を早く処理することができます。

[図6]

唯一解理論の吟味

何より唯一解理論は特定の状況において極めて便利です。上に挙げた例題1〜6はいずれも手筋のみで突破するにはある程度のテクニックを必要としますが、唯一解理論を適用することでより単純な状況に帰着させることができ、解を特定することに限っては無類の有用さを誇ります。

興味深いことに、ペンシルパズルガチャで生成された問題は(体感ですが)唯一解理論が有効に働く盤面が多くなっています。

 

一方で通常のシャカシャカ作問において、これらの推論は脅威どころか存在が致命的です。例えば呼鳥門は「2択が確定しないまま他の部分を埋め、最後に2択を確定させる」というシステムを問題のコンセプトにする利用法がしばしば用いられます。そして唯一解理論の前には斯様な仕掛けは全く無力です。

唯一解理論の存在は、作問において唯一解理論が適用可能な形状を避けるためのコストを要求するという意味で、作問に対する制約たりえます。

ご覧の皆様、どうか人間私が作った問題には唯一解理論をなるべく使わないよう、何卒お願いいたします。

 

また、唯一解理論を正しく利用することは難しく、リスクがつきまといます。

例えば[図7]のように、隅から(4,4)の位置に1が浮いていて他に何もない場合、図7右のように決まることがあります。実際、1の代わりに0が置かれている場合はこの推論は(唯一解理論関係なく)正しいですし、少ない数字で極めて広い範囲が決定するかっこいい形です。

きなこ屋は以前、「他に何もないなら、広大な左上を唯一解にする方法は図7右の決まり方しかない」とさえ考えていました。

しかし図7の推論は唯一解理論から見ても正しくありません。実際に[例題7]のような反例が存在します。とりわけシャカシャカでは広大な空間が意外な方法で充填されることがあり得ます。「他に決めようがないだろう」という感覚や経験だけで唯一解理論を適用するのは危険なのです。

[図7]

というわけで

  • 唯一解理論はなるべく「知らないふり」をしよう
  • 証明されている唯一解理論だけを使おう

という提唱でした。

良き手筋ライフを。

シャカシャカ手筋集 〜L字禁ってなぁに?〜

この記事は「ペンシルパズル Advent Calendar 2024」15日目の記事です。

 

こんばんは。きなこ屋です。

今晩もシャカシャカを採掘してまいります。

本記事はシャカシャカ手筋集です。今後も更新を重ねていく予定です。

理詰めと手筋と仮置きと

Twitter(旧Twitter)で稀に見かける議題として、「理詰め問と仮置き問の境界は何処か」というものがあります。

特定の手筋を知っているか否か、その手筋を適用できるか否かは解答者に依存します。私見ですが、「どんな問題も推論の組み合わせでできている」という仮説に則るならば、解答者が知っている手筋だけで推論できる問題を理詰め問題、そうでないものを仮置き問題と分けることができるでしょう。(この観点では、仮にたった1手1段階でも仮置き(先読み)が必要になってしまえば理詰め問題とは見做せないという点に注意が必要です。)

解答者の手筋体系は経験に依存するでしょう。従って体感難易度も解答者個々に依存することになります。故に目標は次の点にまとまります。

  • 問題を構成しうる手筋を網羅し分類すること
  • 問題が特定の手筋集合で解けるか判定すること

きなこ屋は今年しばらくの間、この二者に取り組んできました。本記事はその途中経過と捉えてくださいませ。

手筋の分類 〜L字禁ってなぁに?〜

手筋への造詣が十人十色であるように、何処から何処までを一つの手筋と捉えるか、も解答者によって差異が現れます。

例として、次の図をご覧ください。

[図1] 似通ったL字禁

左右どちらも、斜めの長方形を右下に延長しないと破綻してしまう形、いわゆるL字禁です。

しかし、左右の形状を一つの手筋と捉えるのは疑問です。なぜなら、仮に斜め長方形を延長しなかった場合、図2のようにL字型の直立領域が出来てしまうのですが、その位置が左右で異なるのです。

[図2] 図1の破綻事由

図3は図2の左右それぞれのL字禁の出現パターンを6個ずつ集めたものです。個人的には、右の方が左より見えづらく難しい推論であると感じます。故にこれらは単一の手筋であるとは言えないと考えられます。

[図3] L字禁の出現パターン

そしてより根本的な問題として、「L字禁」という名前はどの範囲の手筋を指すのか定かではありません。よりシンプルに、L字型の直立領域が生じる状態を全て引っ括めてL字禁と呼称するのが一般的でしょう。

[図4] L字禁とは?

ですが、シャカシャカの手筋の多くはこのL字禁を前提に作られています(ふた、奇数列etc.)。手筋分類の動機を考えれば、L字禁および図1のような派生手筋たちは区別するべきでしょう。

ということで、以下で手筋を分類・列挙するにあたっては、あくまできなこ屋の主観によって手筋を同定していくものとします。

この記事をご覧の諸氏には、是非ともご自身の手筋の類別についてご意見を頂戴したく存じます。「こんな手筋ありますよ」「この手筋はさらに細分できるんとちゃうか」「この手筋はもっと易しい/難しいはずだ」「これは手筋と認めないZOY」など、各位のご経験に基づくご指摘を心待ちにしております。

 

※手筋名は全て仮称です。より良い名称についてもご意見お寄せ下さいませ。

らくらく級【★1】

A-01 [確定数字(大)、確定数字(小)]

黒マス数字が、黒マスの周囲に入る三角形の数の最大値に等しい場合、それら全てに三角形が入ります。

黒マス数字が、黒マスの周囲に入る三角形の数の最小値に等しい場合、それら全ては白マスになります。

誰もが一番最初に獲得する手筋でしょう。本記事では45°禁を手筋に含めていないので...

A-02 [反射]

三角形の隣に「壁」がある場合、壁で反射するように三角形を配置します。

これ無しに解ける問題は存在し得ないでしょう。

※「壁」とは、黒マス/白マスの辺、三角形の底辺、盤面の周囲、のいずれかを指します。

※「白マス」とは、完成盤面で直立長方形に属する白マスを指します。斜め長方形の内部に含まれるマスは除外します。(この記事で紹介する手筋によって生じる白マスは、全て直立長方形に含まれます)

A-03 [袖当て、壁当て、正面当て、角当て]

三角形の向かいに障害物がある場合、それに当てるように三角形を配置します。障害物の位置によってやや置き方が異なります。

ここでは障害物の位置によって細かく4分割していますが、発生する三角形の位置によって「袖&壁」と「正面&角」で分ける説も、逆に反射(A-02)とまとめて5分割とする説もありそうです。

※参考:当て系の比較

A-04 [直立長方形延長]

白マスがL字型に並んでいるならば、それらは単一の直立長方形に属します。

これも広義にはL字禁なのでしょうか。

A-05 [L字禁]

白マス同士が斜めに接していて、それらが同一の直立長方形に含まれないならば、三角形で遮断する必要があります。

多くの手筋の根源。

A-06 [白確]

2つの壁に挟まれたマスは白マスになります。

再掲しますが、白マスの辺も壁に含まれますので、1マスおきの白マスは自動的に繋がることになります。

A-07 [ふた]

直立長方形の単一の辺が一部のみ決まっているならば、該当の辺を塞ぐように三角形を並べます。

45°禁により、ふたを構成する三角形は向きを交互にして並ぶことになります。

A-08 [ハイタッチ]

三角形2つが山型に背を共有しているならば、互いに反射します。

楽々級の中では最も手筋らしい手筋ではないでしょうか。

A-09 [対辺確定]

斜め長方形の向かいあう辺は、同様に延長されます。

手筋と言って良いのか不明な程度に自然な推論です。がしかし、図の右上のように斜め長方形が完成していない状態でも適用することができるのはやや非自明だと考えています。空中ブランコ(C-01)と組み合わせると楽しいことになります。

おてごろ級【★2】

B-01 [P字禁]

そのままではL字禁基礎(A-04)に引っかかる箇所には、三角形が発生します。

使用頻度は相当高いです。具体的に該当する形状を説明するには、この余白は窮屈です。

B-02 [桂馬飛び]

確定数字(A-01)などで三角形を置くべき場所について、その斜め隣に障害物がある場合、三角形の向きが決まります。

慣れると当たり前のように作問時に投入してしまいますが、かなり非自明な部類に入るでしょう。

B-03 [L字禁2]

斜め長方形が角の斜め隣にあるとき、それを延長しなければなりません。

先に挙げた図1もご参照ください。

B-04 [L字禁3]

斜め長方形が角・白マスの斜め隣にあるとき、それを延長しなければなりません。

先に挙げた図1もご参照ください。なお、出現頻度はこちらがずっと低いです。

B-05 [辺傍の2]

P字禁(B-01)の原理で、三角形を置かなければならない場所が存在します。特に、辺から2列目に2が単独で置かれている場合には白マスが1つ決まります。

辺から2列目の2という形で出現することが最も多いですが、その本質は「白マスにならないマスが決まる」というものです。

B-06 [遠当て]

幅が2√2以上の直立長方形における当て(A-03)です。

巨大な斜め長方形で、とりあえず対辺を引いてみる経験は誰にもおありでしょう。

B-07 [幅の不一致]

幅の異なる斜め長方形同士は繋がりません。

手筋としてはずっと明らかな部類ですが、楽々級の問題にはまず現れません。

B-08 [軒下の白]

図のような壁で囲まれた位置には三角形を入れることができません。

「これが確定したところで...」となりがちですが、P字禁(B-01)やL字禁3(B-04)に繋げるなど、輝く場面は確かにあります。

たいへん級 【★3】

C-01 [空中ブランコ]

図の位置関係にある三角形たちは、同一の斜め長方形の辺をなします。

これを適用すると必ず幅2√2以上の長方形ができます。

C-02 [筋違い禁]

斜め長方形が筋違いになる位置に三角形を置くことはできません。

確定数字(A-01)や辺傍の2(B-05)とタッグを組んで現れます。

C-03 [白確先読み]

直立長方形をそれ以上延ばすと白確(A-06)などで破綻する場合には、ふた(A-07)をする必要があります。

これも適用できる形状を列挙すると大変なことになります。

C-04 [L字禁4]

L字禁2,3(B-03,04)を、より少ない個数の三角形から適用することができます。

三角形が主体になる手筋は、実際の盤面で発見するのが難しいことが特徴です。

C-05 [LP先読み]

図のように角の近くに2択の数字があるとき、一方がL字禁(B-01)で破綻することが予測できれば、他方に確定させることができます。

L字禁とP字禁(B-01)の合いの子です。

C-06 [奇数列]

ふた(A-07)は必ず幅が偶数になります。これを逆手に取って、幅が奇数の直立長方形は、幅が奇数である限り何処までも伸びていきます。

これが出現する問題は大抵この手筋を主体にしています。

C-07 [遮断]

幅の異なる直立長方形同士は繋がりません。直立長方形同士の間隔が1マスだと白確(A-06)で繋がってしまうので、間隔が2マスならば両方にふた(A-07)をする必要があります。

C-08 [確定数字+]

確定数字(A-01)のやや複雑なバージョンです。マインスイーパの原理です。

数字が斜めに連なっていて最大値や最小値に近い場合、値が決まることがあります。

数字が2マスおきに配置されている場合、壁当て(A-03)と白確(A-06)によって、それらの間に三角形が入るか否かが連動します。

アゼン級【★4】

D-01 [1の手筋]

数字1の周囲の特定の位置に障害物がある場合、白マスが決まります。

初見ではまず困惑すること請け合いです。

※[1の手筋]の詳しい解説はこちら↓

kinako-ya.hatenablog.com

D-02 [吹き込み]

辺や壁から3列目に数字マスがある場合、三角形の配置が連動することがあります。

LP先読み(C-05)の逆により、三角形が入るべきマスが決まります。

D-03 [呼鳥門]

3マスおきの位置に、向かい合わせに三角形が入ることが確定している場合、それらの配置は2通りのいずれかになり、壁が生じます。

名称募集中。

※[呼鳥門]の詳しい解説はこちら↓

kinako-ya.hatenablog.com

D-04 [風船ガム]

幅2以上の斜め長方形が壁に向かっていてかつ特定の条件を満たす場合、斜め長方形を延長する必要があります。

D-05 [大きい数字]

数字マス付近の特定の位置に三角形がある場合、数字マスの周囲に三角形を置けなくなる状態を避けなければなりません。

ペンシルパズルガチャ産の問題では頻出です。

D-06 [吸い付く壁]

図のように直立長方形の近くに三角形がある場合、直立長方形が1列だけ延長されます。


ハバネロ級【★5】

※執筆時点では工事中です。恐らく汎用性が低いものが多いため、別記事にて改めて纏めることになりそうです。

 

仕舞いに

改めて、ご覧の皆様にお願い申し上げます。体感難易度は何処までも解答者個々によるものです。手筋の分類をより広く扱えるものへと高めるため、ご意見をお待ちしております。

本記事は随時更新いたします。

第2回シャカシャカ早解き大会

こんばんは。きなこ屋です。

第2回シャカシャカ早解き大会を開催させていただきます!

前回と全く同様の形式でございます。

概要

期間:2024/9/28(土) 20:00 ~ 9/29(日)20:00

出題:Twitter(X)

問題数:2問

難易度:おてごろ+アゼン

提出方法:Googleフォーム

詳細

期間

9/28(土)の夜から1日間の開催です。

出題形式

きなこ屋(@xinako444)のTwitterアカウントから問題リンク・回答記録用フォームを公開します。

Aコース(おてごろ)・Bコース(アゼン)として各1問、計2問を出題します。

どちらか1コースだけの参加も、2コース両方への参加も可能です。

提出方法

注意:解答盤面でアンサーキーを記録してください。併せて経過時間も記録して頂ければ、後述のランキングにて発表いたします。

Aコース用のフォーム、Bコース用のフォームは異なります。2コース両方に参加する場合、両方のフォームを任意の順番で提出してください。

各フォームには以下の事項を記入の上、送信してください。

  • TwitterのID (例:@xinako444 または xinako444)
  • アンサーキー (後述)
  • (任意回答)puzz.linkで表示された、解答終了時の経過時間 (例:8:30、15:06、2:03:59)

アンサーキー

今回のアンサーキーは、盤面の指定された領域に重なった白四角形の個数を、上から順に並べます。三角形の個数ではありません。ご注意ください。

例えば下の盤面で、3行目の橙色の領域と8行目の青色の領域が指定された場合、それぞれの領域に重なった白四角形の個数を数えますので、アンサーキーは「5,6」となります。

各問題の領域は出題時及びフォーム内で画像で指定されます。解答終了後、アンサーキーの数え忘れ・経過時間のメモ忘れがないようご注意ください。

画像の場合、橙色の領域と重なる白四角形が5個、青色が6個のため、
アンサーキーは上から順に並べて「5,6」となる。

集計

回答期間終了までに送信された正答記録を対象として、以下の部門でランキングを公表します。

  • Aコースのみ回答者・回答送信時刻ランキング (経過時間を付記)
  • Bコースのみ回答者・回答送信時刻ランキング (経過時間を付記)
  • 2コース回答者・回答送信時刻ランキング (合計経過時間を付記)

2コース参加の場合、A,Bのうちより後に提出されたフォームの送信時刻で集計します。その際に一方のみが正答であった場合、正答したコースのみへの参加として記録します。

注意事項

  • 回答期間中、問題の解答盤面・解き方に直接関わる感想・アンサーキーなどのネタバレ情報を発信する行為はお控えください。Twitter(X)での感想にはタグ#P3_shaka早解き大会を付して頂けますと幸いです。
  • ソルバーの使用は禁止です。複数人グループで参加する場合、1問ずつ解いてから次の問題に移るようにしてください。
  • その他、不明点はきなこ屋のDMまでお気軽にご連絡ください。

シャカシャカを始めたばかりで腕試しがしたい方から、腕に覚えのある方々まで、皆様のご参加をお待ちしております。

博士の失われた自省録 #11 (終)

#11 Memory Lapse

擬空間。

 

地の彼方と空の果てとが交わる臨界点。此岸と彼岸の誘導路。

 

存在を失くした冒険者たちが骨を埋める墓場。

 

ほんの偶然で動き出したエレベーターは、勇敢な二人の探究者たちによって、初めて内側からこじ開けられようとしている。

 

ペンパを倒して地図を作り、座標をぴたりと合わせてエレベーターから飛び降りる。

 

完璧な計算と勇猛な勝利により、二人は元の世界に命を繋ぐことができるのだ。

 

それこそが美しい物語だったのだ。

 

 

 

 

 

そのはずだったのだ。

 

 

私は徐々に増す痛みに眩みながら、ふと一つの違和感を感じていた。

 

変種を継ぎ合わせて一つの変種を作った。その姿は変種と同じ球体だった。あの惑星は本当に擬空間の地図帳になっていたのだろうか?

 

ほんの欠片だった違和感が、集まり、膨らみ、塊となり、湧き立つ。

 

何故なら、この空間は――

 

「Shade!」

 

私は目を開いてそう叫ぼうとしたが、既に掠れた通気音以外の声は出なかった。

 

示し合わせた通りに、彼は愛用の銃を真っ直ぐに構えていた。次の瞬間、一際大きな光弾が勢い良く放たれた。光弾は風を切り、一直線に進み……まだ稼働を続けている赤銅色の装置の全体を包み込むと、跡形もなく消滅させた。

 

視界が酷く歪んだ。

 

私は――最後の最後で間違えたのだ。

 

 

 

[Q11:面積+ハート+シャカジリンβ+相似+バンドル+正方形限定+半月+独身+トーラス]

 

 

 

 

 

装置が消えた刹那、空間が文字通り裂け始めた。まるでノイズがかかったように一部がずれた。それが空間中に伝播していき、あちこちでノイズが生まれ、震えていく。

 

世界が電池切れを起こしているかのようだった。

 

「Cady」

 

Shadeが私の隣に座り、手を伸ばした。その手が一瞬ノイズで乱れる。

 

「ありがとう。君のお陰で元の世界に戻ることができる。俺一人だったなら出来なかったことが成し遂げられた。共に来たのが君で良かった」

 

(違う)

 

彼は私の前髪を払った。彼は笑顔だった。無表情ではなく、満たされた探究心が溢れ出すかのようで、彼の背後で眩しく光る太陽のような笑顔だった。

 

(違う。私は……貴方を助けられない)

 

痺れて動かない全身から湧き立つ焦燥を表情で訴えようとしたが、自分の顔にさえ力が入らない。安らかなままの表情を振り払えず、彼と目を合わせるのが精一杯だった。彼は依然として優しい微笑みを浮かべる。

 

「Cady、あの時はすまなかった。今ならあの誤解が完璧に間違いだと言うことができる。全てを投げ打って目的を成し遂げる君は、俺の理想そのものだ」

 

(私は……自分を犠牲にしてなお、貴方を……)

 

無力さに涙が溢れ、横に伝った。

 

「君に最後まで負担をかけてしまった。元の世界に戻ったなら、すぐに救護班を呼ぼう。積もる話はその後にしよう。それにしても残念だ、どうせなら俺はもっと別な……」

 

(貴方は……!)

 

彼は立ち上がった。再び眩しい陽光が顔に差す。

 

「異世界に行きたかった」

(異世界に行ってしまう)

 

私は「地図帳」の構成を間違えた。

 

それは本質的な間違いではない。トーラスであろうとなかろうと解は解だ。恐らく正しい構成をしたとしても同じ解になっただろう。

 

――そんなことは、最早どうでもいい。

 

何故「擬空間」が存在するのか?

 

何故「擬空間」に出口がないのか?

 

何故、彼の武器はエネルギー切れを起こさないのか?

 

――目の前にいるShadeは、Shadeではない。

 

擬空間はトーラスの形をしたエレベーターだ。その形こそが本質だ。

 

擬空間自体が移動することはない。ただ、至る所がそれぞれの世界と繋がっている。故に中の存在が歩いて一周する毎にエレベーターは「昇降」し、別な異世界に接続されるのだ。

 

――擬空間を何周も移動したShadeは、私と違う場所に立っている。

 

彼は既に遥か遠くの異世界への扉の前にいるのだ。

 

ヒントはいくらでもあった。それがトーラスだと気付いた時ならば間に合ったかもしれない。ただ変種に見惚れ、目が眩んで濁っていた私には、全てが遅過ぎたのだ。

 

 

 

ノイズが益々酷くなり、空間が断層のようにずれ、ついに裂け始めた。繋ぎきれなくなった隙間から、杖が作り出したのと同じような真っ暗な空間があちこちで覗く。

 

擬空間が壊れていく。

 

やっとのことで頭を横に向ける。Shadeは長く短い旅を振り返るように静かに佇んでいる。悔しさに湧く涙が無機質な草を濡らす。

 

「Shadeっ……!」

 

彼は振り返った。目が合おうとする刹那。

 

空間が、空が、地面が、Shadeが。

私が。

割れたガラスの断片のように砕けていった。

 

裂け目の向こうに落ちていく彼の表情は……

 

 

 

 

 

[???]

 

 

 

[???]

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

スイッチを押すと、赤銅色の装置はいつも通りに稼働を始める。研究室に静かな稼働音だけが響きわたる。

 

Cadyは生産中を示す赤ランプを見ながら、珍しく暫しぼうっとしていた。何か違和感があるような気がする。いや、実験は全て順調だ。大事な実験中に気を散らしてはいけない。

 

――Shadeっ!

 

一瞬眩暈を感じて装置に手をついたが、後ろの警備員に違和感を持たれないよう直ぐに持ち直した。

 

「……不思議なこともあるものね。変種の性質かもしれないわ」

 

やがて装置のランプが消え、上部から管を通ってシャカシャカが生成された。

 

見慣れた只の検体だ。

 

だがその姿を見た時、私は力が抜けたように腰から崩れ落ちた。

 

――トーラス。

 

「博士! 大丈夫ですか!」

 

駆け寄る警備員の声が遠く聞こえる。気が動転し、尻餅をついた弾みにポケットから落ちたものを拾い上げる。

 

それは無彩色の星形の護法だった。しかし、落とした拍子とは思えないほどに粉々に砕けてしまっていた。

 

「Shade」

 

警備員にも聞こえないほど小さな呟きだったが、その響きだけがいつまでも頭に残っていた。

 

 

 

 

博士の失われた自省録 終

博士の失われた自省録 #10

#10 Essense Scatter

 

「これが『地図帳』か。異質だな」

 

彼は装置の液晶を覗き込んで、九つの変種が重なり繋ぎ合わされた図を観察すると、素直な感想を述べた。疲れていながらもまた直ぐに戦えるよう、銃は握ったままだ。

 

「これも解く必要があるんだな?」

「ええ、残念なことにね。一つ一つの構造は単純とはいえ、相当な強敵になるわ。もう計算は必要ない、二人で協力しましょう」

「君は休息を取るべきだろう。無理な理詰めが祟って倒れられてはお終いだ」

「いいえ、もう猶予は限られているわ。それに……」

 

私は南中を迎えようとしている太陽を見上げた。最初に見上げた太陽の位置に重なるまでそう遠くないだろう。

 

「私は我儘なのよ。どうしようもないほどね」

 

彼は肩を竦めた。私が液晶を操作すると直ぐに装置のランプが点灯し、轟音を響かせて強大な敵の生産を始めた。

 

「Shade」

「ああ」

「その瞬間になったら、私が装置を操作して『エレベーター』を止める。ただ、もしそれが出来ないと判ったら……装置を破壊して。理論上は同じ結末になるはず」

「良いのか? 君が意識を失わなければ問題ないが、大事な相棒だろう」

「世界に一つだけの相棒はね……もう、この子だけじゃないわ」

 

彼は初めて無表情を大きく崩し、目を見開き、私を見つめた。驚いた表情だが、その目は喜びを隠しきれないように動揺している。

 

「Cady」

「……何かしら」

「……続きは元の世界で話そう」

 

彼は直ぐに真面目な表情に戻り、銃と棒を両手に構えた。私は彼に言いたい事、話したいことが湧き出してくるのを、名残惜しく振り払って杖を握った。

 

二人が見つめる中、動きを止めた装置の上方から「それ」は静かに浮き上がった。

 

それは真球だった。

 

美しいまでに滑らかな真球が佇んでいた。水、岩、枝、雲のどれにも似て、それらを丁寧に混合して静かに濾したような真球は、まさに一つの惑星と呼んで差し支えなかった。

 

私が息を呑む横で、彼は散角銃を放った。しかし光弾は惑星の手前で滑るように弾かれ明後日の方向へ飛んで行った。代わりに惑星の周囲に純粋な自然が浮き上がる。ミニチュアの雨、礫、葉、雷などが次々に立ち込める――その一つ一つが今までに対面してきた変種に近い大きさの純粋な塊を模る。

 

彼は体勢を低くした。明らかに顔を顰めているのが顔を見なくとも伝わってきた。私も続いて杖を握り直した。

 

私と彼と惑星と、誰が口火を切るでもなく、決戦が幕を開ける。

 

 

真っ先に飛来する岩の大きな欠片を、彼が力強く叩き落とす。

 

 

[地図1:面積]

 

 

灰色の雲から幾筋もの線が伸び、一瞬後には私の横を電気の槍が走る。

 

 

[地図2:ハート]

 

 

音もなく凝集した氷の粒が足元の草を凍らせ、彼が急いで飛び退く。

 

 

[地図3:シャカジリンβ]

 

 

隙を見て彼が放った素早い光弾は、やはり惑星の手前で捻じ曲げられる。

 

 

[地図4:相似]

 

 

大量に放った光弾の一つが惑星の端を掠めたが、忽ちその部分が再生していく。

 

 

[地図5:バンドル]

 

 

水球からゆっくり散布される霧が、徐々に周囲に立ち込め、視界をぼやかす。

 

 

[地図6:正方形限定]

 

 

噴石が目前で破裂して酸を撒き散らし、私は杖のチャージを中断せざるを得ない。

 

 

[地図7:半月]

 

 

足元の草が急激に伸びて私を絡め取ろうとするのを、杖で何とか薙ぎ払う。

 

 

[地図8:独身]

 

 

惑星が鳴動すると、突如途轍も無いほどの轟音を上げた。私はよろめいた。

 

 

[地図9:重心+非互換]

 

 

 

岩の質量を受け止めれば足元が半分凍りつき、出鱈目に動けば電気に貫かれる。慎重に移動しようとも、濃霧の中で酸の破裂が襲う。草に絡め取られながら放つ攻撃は捻じ曲げられ、当たれども直ちに再生する。挙句には不定期に轟音が襲う。

 

逃げ惑う中、白衣の裾が運悪く氷に捕らわれ、転倒してしまった。一瞬の後、背中に巨大な岩がぶち当たるのを感じた。

 

「かはっ……」

 

臓腑が押し出されるような衝撃が襲い、骨が幾つか砕けるのを感じた。だが致命傷ではなかった。次が来る――鈍い痛みを抱えて立ち上がり、また走り出す。もう少し遅ければ草が首筋に締めついていたことだろう。

 

Shadeも反対側で酸の散発的な破裂を避けるのに必死だ。霧に囚われる中、彼の天性の勘だけが噴石を避けさせている。それでも彼のスーツの一部に赤紫の蒸気が纏わりつき、煙を上げ始めている。

 

それはどうしようもないほど圧倒的で避けようのない、自然の完全態だった。

 

 

 

[地図 - 全体]

 

 



 

 

 

「Cady! アレをやるんだ!」

 

氷を避けて高く飛び上がったShadeはそう言うと、棒を高く掲げた。その途端、鋭い岩塊や疾い電流が一挙に方向を変えて彼の方へと襲い掛かった。

 

私は意を決して逃げ惑う足を止め、急いで杖を構えた。そして禁断のプロトコルを唱え始めた。

 

彼は滞空中で棒を掲げながら片手で迫り来る岩と酸とを弾き飛ばしたが、一筋の雲が彼の腹部を狙っていた。走り抜けた電流が鋭く彼を襲い、彼は呻き声を上げた。しかし彼は棒を離さない。

 

じくじくと響く痛みの中で彼の名を呼ぶ衝動を何とか押さえ、私は美しい惑星に杖の先端を向けた。

 

瞬間、轟音が響いた――それは惑星の鳴動ではなかった。惑星の周囲が陽炎のように歪み、続いて異次元の暗黒が覗いた。謎の力も及ばず、空の裂け目が惑星を丸ごと飲み込もうとする。

 

その時強烈な地響きが起こり、地面が地震よりも強く揺れた。私は耐えられず体勢を崩し、杖の狙いを離してしまう。空の裂け目が閉じ、衝撃波が辺りを襲う。

 

再び目を開いた時……真球の惑星は大部分を失っていた。宇宙を練り込んだような球の内部が覗いている。周囲に漂っている小球もいくつかは失われている。しかし、一部でありながらまだ残っている惑星は蠢き、次の攻撃に向けて再生を始めている。

 

「Cady!」

 

霧が晴れ、草の束縛から逃れた彼が二本目の銃を構えている。しかしその銃口は惑星ではなく私に向いている。

 

驚く間もなく放たれた火炎が私に向かい、そして私の横をすり抜けて飛んだ。

 

振り返るとそこには新たな球体が炎に包まれて蠢いていた。

 

「装置はまだ稼働してる。俺は新手を片付ける、君は奴にとどめを」

 

Shadeは残酷にも盛んに稼働し続けている装置の方へ走った。惑星の残りを消し去るべく、私は酷く痛む胸を押さえて杖を構えた。

 

 

 

[Q10:独身+八角形+ハート+斜め+覆面+シャカジリンβ]

 

 



 

 

惑星は欠けた部分を再生しつつ、執拗にこちらの足元を凍らせようとしている。情けは要らない――私は杖を構え、再びそれを唱えた。

 

足先が地面に冷たく固めつけられる。草が裾を這い上がり巻き付く。瘴気を纏った噴石が惑星の周りに漂い始める。しかし私は唱えるのを止めない。

 

射出された噴石は一直線に私目掛けて飛ぶ。それが破裂すれば、或いは私を貫けば――

 

「変種は、私のものだあああああ!!」

 

惑星が轟音を響かせるのと、それが開くのとが同時に起こった。全てを飲み込もうとする虚空の畝りと惑星の鳴動とが惑星と私の中間でぶつかり、衝撃波となる。衝突した音波はそのまま押し合い、他方を呑み込もうとする。猛烈なエネルギーの均衡に、地面が、草が、空気が慄く。擬空間を大きな波紋が襲う。

 

「ああああああああああああ!!!」

 

巨大な圧力が杖の先端からびりびりと伝わり、私は咆哮する。

 

均衡が震え、揺らぎ、徐々に崩れ始める。エネルギーの波が惑星側へと押されていく。異空間が口を開ける――

 

全てが吹き飛んでいく。

 

 

 

――目を開けると、氷も蔦もなかった。惑星は消え、ただ青い空だけが広がっていた。

 

元通りになった周囲の草は変わらず静かで、轟音の残響が少しずつ消えていくのを感じる。

 

私は脱力し、仰向けに倒れ込んだ。肋骨の痛みが響き、もう動けそうになかった。

 

眩しい陽光を、一つの影が遮った。

 

「無事か」

「助け起こすのは後にして……装置を……太陽が……頂点に…………」

 

渇ききった喉からもう声は出なかったが、それ以上の説明は彼には必要なかった。彼は使い慣れた銃を構え、装置に向けた。私は目を閉じた。

シャカシャカでシャカシャカを作る

こんばんは。きなこ屋です。

早速ですが、次の[問題1]をご覧下さい。

[問題1]

次に、[問題2]をご覧下さい。

[問題2]

この2つは同じ問題です。

シャカシャカをやり過ぎて壊れた訳ではありません。[問題2]は[問題1]をシャカシャカとして実現したものです。

この記事ではシャカシャカでシャカシャカを再現する方法について考えていきます。

1. 完成図と動機

改めて問題2を注視しましょう。図の緑色に照らした部分に注目します。ここには、問題1の盤面16マスが1マスずつバラバラに切り離され、50マスおきに配置されています。

そして問題2を解いて緑の部分を抜き出すと、ちょうど問題1の正解盤面に一致するという仕掛けになっています。

言うなれば、シャカシャカ(問題1)のルールをシャカシャカ(問題2)で表現したわけです。

今回の構成法では、問題1だけではなく、任意のシャカシャカを問題2のようにメタ構成することが可能になっております。ただし盤面サイズは50倍になります。

('24 8/26追記:斜め2×3以上の白長方形を含む場合には上手くいかないとの指摘を頂きました。問題によっては再現可能である、と訂正します。)

10×10→492×492

 

動機はライフゲームのOTCA Metapixelというパターンです。ライフゲームでライフゲームが作れるならば、シャカシャカでシャカシャカも作れるはずですよね。

ここでは①シャカシャカで論理演算を作り、②論理演算でシャカシャカを作るという2段階の変換を行うことになります。

 

このうち①は過去に取り組んだ結果を利用できそうです。そこで②、シャカシャカというパズルを論理演算だけで再現する方法が問題になります。この記事ではその構成方法を解説していきます。

※シャカシャカで論理演算をする話はこちら

kinako-ya.hatenablog.com

2. ルール

まず、シャカシャカのルールをおさらいしましょう。

  1. 盤面のいくつかのマスに三角形を配置する。
  2. 塗られずに残った領域は全て長方形(正方形も含む)になる。
  3. 数字は、周囲4マスに入る三角形の数を表す。

普段なら呼吸するように従っているルールですが、これを回路で再現するとなると話は複雑です。

ルール1:三角形を配置する

各マスに三角形を配置する方法は、4方向に加えて白マス(置かない)の計5通りあります。これを再現するには、何らかの形で「マス」を用意し、それが5つの解を持つようにしなければなりません。

そこで今回使うのが下図の形です。この5×5盤面を「マス」とし、5通りの解をそれぞれの置き方に対応させます。

5つの解を5通りの置き方に対応させる

後は「マス」同士を上手く繋ぐことで置き方に条件をつけてやればOKです。

ルール2:残った領域は長方形

このルールは大域的過ぎて曲者です。後でマス同士をケーブルで繋いで判定することを考えると、あまり遠くのマス同士や多くのマスを繋ぐわけにはいきません。

そこで簡略化に簡略化を図った結果、ルール2は次の2つに言い換えられました。

  • 2-1:全ての三角形について、その左隣は図の2パターンの何れかになる。

    曲がる(緑)か伸びる(橙)か
  • 2-2:全ての頂点について、隣接する4マスのうち、3マスが白マス(三角形が入らない)ならば、残り1マスは白マス或いは頂点を向く三角形。

    これ以外の向きの三角形は入らない

以上2つを満たすことが、「残った領域は長方形になる」の同値な言い換えになります。多分。

これらは局所的な条件であり、周囲3~4マスの情報だけで判定することができます。

ルール3:数字は三角形の個数

これ自体はルール2と同様に局所的な制約です。しかし設計上の影響があります。

ルール1ではマスを5×5小盤面で再現しましたが、それは白マスの話。黒マスは三角形を入れられませんので、別な形を用意する必要があります。ルール3の存在により、黒マスは入力ではなく判定機の役割を担わなければなりません。

そこで用意したのが下図の形です。周囲4マスが白マスか否かを取得してこの機構に接続することで、ルール3を判定することができます。

中央に浮いた黒マスの数字=周囲の4つの正方形のうち三角形が入る数

ルール2と3の判定のためには、それぞれのマスから特定の向きに三角形が入っているかどうか等の情報を取り出し、それを「判定機」までケーブルで運び、判定にかける、という手順を踏む必要があります。しかし、ルール3の判定に必要な白マスか否かという情報をマスから引き出すのは簡単ではありません。それもマスに隣接する4頂点の全てでルール3を判定しますから、ただ引き出すだけでなく、その情報を4方向に分配する必要があるのです。

3. 構造

というわけで完成形を見てみましょう。

一見複雑に見える問題2ですが、実際には4つのパーツの組み合わせで構成されています。

  • 白マス

    マスを中央に有し、5通りの解から都合16の出力を行う基幹部分です。

  • 黒マス

    対応する数字を中央の黒マスに入れて、4方向の入力からルール3を判定します。なお巨大長方形たちは装飾です。

  • 辺

    隣接する2つのマスから6つの入力を受け、L字部分でルール2-1を判定します。

  • 頂点

    12~16の入力によって、中央でルール2-2を判定するとともに、辺から辺へ情報を受け渡します。

以上4ピース(と外周部の調整)の組み合わせによって、任意のシャカシャカの盤面をシャカシャカとして再現することができます。

詳細は割愛しますが、それぞれの制約判定の様子を眺めてみましょう。

  • ルール2-1

  • ルール2-2

  • ルール3

4. 展望

本作にはまだまだ課題が残されています。

大き過ぎる

問題1,2ではたった4×4のシャカシャカを再現するために186×186の盤面を要しました。今回の構成ではピース同士は50マスおきですので、元の問題に対し約50倍の盤面サイズ・2500倍の面積を必要とします。

サイズが大き過ぎることの難点は、冗長すぎて人間の手に負えないことに加え、もう一つの致命的な弱点を抱えることにあります。

それは、URLが長過ぎること。

URLが長くなると、読み込みに時間がかかるばかりか、そもそも414エラーによって開いてくれないという事態に陥ります。

また会いましたね

例えばぱずぷれv3の場合、通常の問題であれば150×150程度はぎりぎりエラーに引っ掛からずに開くことが出来るのですが、論理回路は黒マスが多いために100×150(2×3)程度が限度になってしまいます。

対処法として余分な空間を用意して黒マスを減らすことは可能ですが、本質的な対策はやはり伝達効率を上げてブロックあたりの面積を縮小することでしょう。

とりわけ信号を交差させる素子の使い勝手があまり良くなく、多重交差素子の開発に成功すればかなり省スペースが可能になると思われます。

また現状ではn×n盤面に対して約4(n-1)²回の判定が必要になりますが、ルール2-1,2-2,3を見直すことによって判定の回数を減らすことが出来ればこれまた縮小に貢献するでしょう。

シャカシャカに見えない

元はと言えばライフゲームのように「シャカシャカを解いて遠くから見ると大きなシャカシャカに見える」というものを目指したのですが、結果として回路の完成がやっとでした。

ということで目下の課題はシャカシャカの盤面を上手く再現する方法です。最近練習中のシャカシャカお絵描きを応用して頑張れるでしょうか。

上で述べたように回路を縮小することも、結果としてシャカシャカのように見えやすくなることに貢献するでしょう。

5. 終わりに

シャカシャカ→論理回路→シャカシャカという変換に挑戦しました。

次の目標は、シャカシャカに代えて他のパズル種を試すことです。一部のパズル種では論理回路を構築する研究があるようですので、パズル種によってはずっと面白いことが出来るのではないでしょうか。或いはシャカシャカで他のパズルを再現していくプロジェクトも面白そうです。

類似の研究が待たれます。